第2章 許嫁とカミングアウト
「清華……」
深夜が切なそうな声で私の名前を呼ぶ。
「ごめんなさい。私、酷いこと言った」
「良いよ。気にしてない。過ぎたことだしね」
やっぱり深夜は、まだ、真昼のことが好きなのだろうか。少しだけ伏せられた瞳が、それを物語るようにさえ見えてくる。
ギリ……っと下唇を強く噛んだ。
「ほら、唇 噛まないの」
気付かないうちに私の隣へ移動していたらしい深夜。左手が私の頬に。右手が私の下唇にそっと添えられる。
「あ〜あ。切れちゃってる」
「良いよ。別に」
そう言って深夜の手を顔から離そうとする。
「ダメ」
けれど深夜は離してくれない。気まずさから深夜の顔を直視出来なくて、目線を下に落とす。
そして、
ガバッ
と抱きつかれる。
「ちょっ……う、わ」
流石に60kg越えの男を支えることは叶わず、2人仲良くソファに倒れ込んだ。