第1章 出会った彼は六つ子でした
「あの、大丈夫ですか?」
「ああ。着替えなら家にあるからな」
「…そうですか。じゃあ私は帰っ」
「まあ待てよ」
カラ松さんが渾身の力でおそ松さんの頭を殴ってから。
私は彼に連れられて、
彼の自宅にまで来ていた。
「なぜこんなことに…」
「風邪を引くと大変だから早く帰れと言ったのはお前じゃないか、カラ松ガール」
「言ったけどさ…っていうかカラ松ガールじゃないんですけど」
ややふてくされた私を強引に引っ張りながら扉を開けるカラ松さん。
「ただいまー」
「わっせ、わっせ、お帰り兄さん!!」
「うわっ!!」
「あれ?知らない姉ちゃんだ!!こんにちは!!」
瞬間、中から青年が飛び出してきた。
それも人間とは思えない跳躍力で。
慣れているのかさっと避けたカラ松さんに対し、こんな事態を予測していなかった私は彼を避けることが出来ず、二人して倒れこむ。
その時ようやく知らない人の存在に気付いたらしい彼だが、特に不信感も何もなく挨拶をしてきた。
警戒心の欠片もないその様子に思わず破顔しそうになったけれど、その口角はすぐにひきつった。
飛び出してきた青年もまた、おそ松さんやカラ松さんと同じ顔をしていたからである。
「何?今大きな音がしたけど十四松?」
「あれ、女の子じゃーん。カラ松兄さんやるね!」
「ちっ…生きてやがったか」
その後ぞろぞろと姿を現わす松野家の住民。
その3人もやはり、彼らにそっくりで。
「え、え、……まさか」
「あれ、言ってなかったか?
俺たち、六つ子なんだ」
"六つ子には絶対に絡まない方が良いザンスよ!!ろくなことにならないザンス!!"
イヤミさんの言葉が、蘇る。
しかしその忠告も、今となっては役に立たない。
そう、私は出会ってしまったのだ。
私の人生を一変させる、松野家の六つ子たちに。
「……嘘でしょ」