第6章 姉妹
「でも代金前払いしてもらってたし、他に思いつかなかったからこうなった」
「…な、成る程…?」
「まぁそう言うことだから君をここに連れ込んだのに下心はないよ、安心して」
そう言うと、カラ松は初めて自分が不安を感じていたことに気付いたようだ。
肩からふっと力が抜けたのがこちらからも分かった。
「…ふっ、勿論お前を危険視していたわけじゃないさ、ハニー。しかしここまでお膳立てされたら男として引き下がるわけにも」
「カラ松」
「いかな…な、何だ?」
普段通りの振る舞いを出来る程度には落ち着いたらしい彼がぺらぺらと話すのを遮り、立ち上がる。
彼に触れると、前回の経験があったからか途端にビクつくカラ松をそっと抱きしめた。
「……!?」
「そんな今更カッコつけなくて良いよ。今日はもう休もう?……色々あって、カラ松も疲れてるでしょ」
「…あ、あぁ…」
殴られるとでも思っていたのだろう、失礼な奴。
いくらこの間ハニーと呼ばれて切れた私といえど、今日という日を終えた彼にキツくあたることは出来ない。
ぽかんとした顔でベッドに寝転がった彼に掛け布団をかけてやる。
家のそれとは違う感触に楽しくなったのか、その後は少しだけ頬を緩めていた。
「それじゃあおやすみ、カラ松」
「…はどこで寝るんだ?」
「ん?帰って家で寝るよ」
タクシー呼ぶし大丈夫、そう伝えて部屋を出ようとすると、くいっと服の裾を引っ張られて足を止めざるを得なくなる。
「……カラ松?」
今この部屋には私と彼しかいない。
つまり私を止めるのはカラ松しかいない。
「どうしたの、何か頼みでも…」
「………くな」
ベッドに目をやると、彼はうつ伏せていて表情は見えない。
しかし枕に押し付けてくぐもった彼の声が、やけにはっきりと聞こえて私は動けなくなってしまった。
「…行くな、1人にしないでくれ…」