第4章 誰を養う?
ハタ坊と出会ってからまた数日が経った。
ここ数日の私の生活は、わりと落ち着いている。
ハタ坊のところにいってもまともな商談のみで終わるし、イヤミさんや六つ子たちと会うこともない。
いたって平凡、でもつまらない日々。
「何か面白いことないかなー」
そう思った矢先のことだった。
「あ!!ちゃん、いいところに!」
頭上から私を呼ぶ声がする。
見上げるとそこには、あの夜以来会っていない顔があった。
そう、松野家の六つ子だ。
私を呼んだのはおそらく三男のチョロ松。
そういえば彼らの家はこの辺か、と"松野"の表札を見ながらなんとなく思った。
「いいところって何が?それよりチョロ松、あんた達この間私に」
「それどころじゃないんだって!!とりあえずこっち来て!」
「へ?!ちょ、チョロ松?!」
六つ子にはこの間おでん代を払わされた恨み…と言うほどではないが、貸しがある。
ずっとその代金を請求しようと、暫くは彼らの姿を探し回っていたというのに、六つ子の姿はちらりとも見えなかった。
なのにハタ坊からの思いがけない収入や、日が経って怒りが収まったことからもういいやと半ば諦めていた頃になって再び姿を表すなんておかしくはないだろうか。
これは私が怒り狂っていた時は避けていたに違いない。
そう確信して、鎮火しかけていた彼らへの怒りがふつふつと再燃してきた私をよそに、チョロ松は迷わず私の腕を掴むと自宅に引き入れた。
「何よ、いきなり!!………って、へ?」
「…あら、チョロ松、その方はどなた?」
「あっれーじゃん!ひっさしぶりー!」
「まさか君も僕らを養ってくれるの?」
そして連れて行かれた場所では、
なぜか扶養をかけた面接が始まろうとしていた。