第3章 取引先もハタまたすごい
とんでもない人たちと出会った次の日。
今日から本格的に私の新しい会社勤めが始まる。
「おはようございます」
「おはよう、さん。今日からよろしくね」
同じ事務方の人に大まかな仕事を教えてもらい、早速仕事に取り掛かる。
ここの人は皆優しくて、仕事が楽しかった。
そんな風に思えたのは久しぶりで、心なしか仕事もはかどる。
前いたとこは酷かったからなぁ…。
"どうしてアンタが私より評価されるのよ"
"姉のおまけのくせに"
"異動だって?せいせいするわ!"
「っ…」
"お姉ちゃんみたいに頑張ってね"
"、姉さんを見習えよ"
"あなたなら大丈夫よ、だって私の妹だもの"
「、やめて…っ」
どこからともなく聞こえる昔の声に耳を塞ぐ。
いや、実際は聞こえるはずがないのだが、脳裏に直接流れる声ははっきりしていて振り返ればそこにあの人たちがいるような気さえした。
いない、あいつらはいない。
ここにはいない。
そう自分に言い聞かせて乱れた呼吸を整えるために深呼吸を繰り返すと、少しずつ楽になってくる。
声も流れなくなったところで耳から手を離すと、代わりに別の男性の困ったような声が聞こえてきた。
「あの、お手伝いしましょうか」
「おや君は…確か新人だったね」
「はい、といいます」
「ちょうど良かった、今から製品を納品しに行くんだが人手が足りなかったんだよ。来てくれるか?」
「はい、分かりました」
それは先日の挨拶でもあった直属の上司。
どうやら共に行くはずだった社員が出先で事故に遭ってしまったらしい。
流石に1人で納品はキツイだろう。
納品先といえばうちの会社の取引相手。
そこの人達と会っておくのは損ではないと思って、了承した。
「いやぁ、助かった。今日は新製品の紹介を向こうの社長が直々に聞いて下さるから遅れるわけにはいかなくてね。すまんね仕事外のことを」
「構いませんよ、ちょうどひと段落したところでしたし」
「ありがとう……お、見えてきた」
あれが取引先のビルだよ。
そう上司が指差した方を向くと、そこには。
「………すご」
とんでもなく豪華な建物があった。