第2章 忠告の意味
その後のことはあまり覚えていない。
やたらと六つ子にビールを勧められて、普段の倍以上飲んでしまったのだ。
どこで眠ったのかは覚えていないけれど、皆が楽しそうに笑って、話しているのを見ていたらだんだん心地よくなってきて、意識が遠のいたような気がする。
目が覚めたのは、深夜2時。
チビ太さんが店を閉めるからと、わざわざ起こしてくれたのだった。
「ん…すみません、寝ちゃって」
「いや、構わねぇよ。ほい、これお代な」
寝ぼけ眼をこすりながら、受け取ったお代の紙を見る。
「え?!?!」
一気に目が覚醒した。
「え、チビ太さん…こんだけ私飲み食いしたんですか?」
そう、紙には1人分とは思えない金額が記されていたのだ。
屋台のおでんお1人様でこれだけの額って、いくらなんでもおかしい。
そう思って聞いたのだが、チビ太さんは首を傾げて答えた。
「何言ってんだお前?お前が六つ子たちの分も払うんだろ?おそ松が言ってたぜ」
「………は?」
なるほど、7人分の合計金額なら納得の金額だ。
しかしそこで納得するわけにはいかない。
辺りを見回すもそこに彼らの姿は見えない。
私を置いて帰ってしまったようだ、支払いはきっちり押し付けて。
「……あいつら…」
しかしここで彼らの分を払わなければチビ太さんが困る。
いつか絶対この借りは返させると心に決めて、私は泣く泣く財布の中身を差し出した。
あいつら最初から私に押し付ける気だったに違いない。
思い返せば、彼らは財布を気にすることなくがばがば酒を飲み、欲のままにおでんを食べていた気がする。
思いもよらぬ出費に軽くなってしまった財布を見つめて、私はもう1つ心に誓ったのだった。
「…給料日まで、節約しようっと」
「そういえばよ、お前知らないみたいだから先に教えておく」
「え?」
「あいつらの仕事、さっき聞いてたけどよ…
あいつら、ニートだぜ?」
「………はぁ?」
チビ太さんに告げられた衝撃の事実に開いた口が塞がらない。
普段あいつら支払いツケにしてるしよ、チクショー。
そんな言葉を聞いたとき、私はイヤミさんの言っていた忠告の意味を、理解したような気がした。
あの六つ子は、只者ではないのだ。