第2章 可愛いなんて生温い(刀剣乱舞/御手杵)
いつだったか、テレビで見た。
短刀たちは既に眠ってしまう時刻の番組だった。主である審神者が生まれた時代で言うところの、『外国』の映画だったと思う。
その映画の主演俳優の顔や、話のオチは覚えていないのに、何故かその場面だけは妙に鮮明に覚えていた。
血塗れの男を抱える女。
女は必死に男の腹から溢れる血を止めようとするのに、女の細い指の間からみるみる溢れていく赤い色。
泣きながら男の命を繋ごうとする女に、男は震える手を首に回して女の顔を唇に寄せる。
こんなことをしている場合ではないと泣きながら憤る女に、男は血の気の失せた顔で口角を上げた。
『何でかな。こんなことになっているのに、今君がいつもより可愛く見えて仕方ないんだ』
そう言って男は女に深く口づけた。
その時は「自分の命より色気の方が勝ってるなんて、とてつもなく好色なやつなんだなぁ」くらいにしか思っていなかった。
――あぁ、でも。やっとわかった。