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【短編集】シュガーを一匙、ミルクはお好み

第4章 ある日の朝(アルスラーン戦記/ギーヴ)




 何で、私には何度も会いに来るの。

 何で、私を何度も抱くの。

 何で、私にも自分にも後腐れが残りそうな間違いを犯すの。

 何で、私と一緒の寝台で朝を迎えるの。

 やめてほしい。
 そんなこと。今更。
 諦めていたのに。期待するだけ無駄だと思っていたのに。

 そんなことを言われたら、期待してしまう。

 実は私は、貴方にとって特別なんじゃないかって。

「ギーヴ」

 ねぇ、どうして?



「…………。……、俺は」

 しばらくの沈黙。
 やがて、何か決意した顔でギーヴが口を開き、



 チュンチュン。チュピチュ。

 窓辺に留まった小鳥が、歌うように囀ずる。
 思わず窓の方へ振り向けば、目映い朝日の中で仲睦まじく寄り添う二羽の番。
 本来は微笑ましく見ていられるはずのその光景は、今の私にとっては死刑宣告にも等しい。

「まずい……!!」

 色ボケていた思考が、再び急激に現実に引き戻される。
 完全に日が昇っていた。急がなくては、本当に取引に間に合わなくなる!

「……あぁもうこんなのんびり話をしてる暇なんてなかったのに!!ギーヴ!ひとまずこの話は後で!早く着替えて!!」
「は……ちょ、?」
「元はといえば貴方のせいなんだから今日は散々コキ使ってやるからね!覚悟しなさい!!ともかく時間がないの!いいから早く準備を手伝って!!」

 昨日の疲労と痛みが強く残る身体に鞭を打ち、寝台の敷布を一枚身体に巻き付け、矢の如く勢いで寝室を飛び出した。


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