第2章 知り合い
「あ……。」
試合が始まった。
朝から早々菅先輩にくっつき過ぎた玲奈は、流石に田中先輩が怒るからまずいと言って離された。
だからって私の隣でぶつぶつ文句たれてると先輩たちの感想が聞けないんだけど……。
先ほどから翔陽君のスパイクが蛍にブロックされまくってる。
ムカつくことに、蛍はいつものような見下す笑い方で影山君や翔陽君を挑発してくる。
「私がぶん殴ってやりたい……。」
「花乃流石に怒られるからダメ。」
玲奈に注意されてしまった……。
試合の中での話を聞いていると、影山君のトスで、敵も味方も置き去りにする凄いトスがあるらしい。
影山君……そんなの使わなくても勝てるって言ってるけど……。
状況は圧倒的に影山君たちの不利だった。
私はこの1週間、影山君達の練習を見てきたのでそちらを応援したい。だってあっちにはムカつく蛍もいるし……。
(頑張って……。)
同じ部活内での勝負だから、ここで声に出して応援すると不平等だ。だから心の中で応援するしかない。
練習の中でも見てきた影山君の凄いサーブがキャプテンに返された時には、私も思わずあっ、て言っちゃったけど……。
(それにしても、蛍のやつ影山君に突っかかりすぎでしょ!)
二人が何やら話していると、影山君の表情が悪くなっていく。
それを見ていると、なんだかとても苦しかった。
「何なんだお前!この間から突っかかりやがって!!」
「しょ、翔陽君!?」
その時、蛍に向かって叫んだのは翔陽君だった。
「王様のトスってなんだ?」
「キミ、こいつが何で『王様』って呼ばれてるのか知らないの?」
翔陽君の質問に蛍が答える。
(『王様』って、前に玲奈から聞いたやつだ……。)
思わず玲奈の方を見ると、彼女はまだ落ち込んでいる様子で何も聞いていなかった。
翔陽君がその理由を自分の予想で答えると蛍は声を上げて笑った。
「でも『王様』って異名、北川第一の奴らがつけたらしいじゃん。」
北川第一って、影山君がいた中学校って話だよね?
チームメイトが……
「自己中の王様。横暴な独裁者。噂だけは聞いたことがあったけど、あの試合を見て納得したよ。横暴が行き過ぎて、あの決勝『ベンチに下げられてた』もんね。」