第2章 確信的な質問
授業中、ずっとあいつの後ろ姿を見ていて、わかったことがいくつかある。
1つは、全く授業を聞いていないこと。
いや、聞いているのかもしれないが、あいつは授業の大半を窓の外を見て過ごしている。
何か見えるのかと思って眺めたが、青い空をバックにし、暑苦しい太陽と、優雅に動きまわる雲くらいしか見えなかった。
2つめは、なんだか男どもがよく話しかけてくること。
俗に言う"イケメン"の部類の者や、そうでない者まで、幅広い男どもが"ヤスミジカン"のたびにあいつに話しかけていた。
もっとも、あいつはずっと窓を眺めているか、読んでもいない本を開いて眺めるかしていたから、会話は成り立っていなかったが。
3つめは、そのせいで女どもがあいつを敵視していること。
女どもは自分より特化した奴を、異性でない限り許さない生き物だからな。
多分プールサイドでのことも、これが原因なのだろう。
そして最後。
あいつにはやはり、羽が片方にしかないことだ。
天使の羽なのは間違いない。
だが、なぜ片方なのか…
ぐるぐる考えていると、かん高いチャイムが鳴った。
今日のガッコウは終わりという合図だな。
鳴るやいなや、あいつは鞄を持って席を立った。
腕を組んで、怖い顔をしている女どもに囲まれているせいで、席から移動することはできなかったけど。
「話があるんだけど。ちょっと来てよ雪華さん」
なるほど。あいつの名前は雪華と言うのか。
確かに雪っぽいな。特に髪の毛が。
そう思っているうちに女どもは雪華を連れて教室を出て行った。
聞きたいことがあるから話がしたいのに連れて行かれては困る。
俺は後を追う事にした。