第1章 出会い
「…何?」
ハッと我に返る。
人間の女ごときに見とれていたなんて、なんだか恥ずかしくて顔が赤くなる。
それを隠すためにパッと顔を背け、べつに。とだけ声を発した。
「そうじゃなくて。あなた"何"?」
「?…ここは普通、誰って言うところじゃないの?」
「冗談でしょ?だってあなた、"人間じゃないじゃない"」
薄っすらと笑みを浮かべながらそう言われた。
正直、驚いた。
悪魔の羽は隠してあるし、どこからどう見ても人間のはずだ。
なのに…どうしてわかったんだ。
俺が人間じゃないことが。
「なんでって顔してるね」
確かに普通の人には見えないかもしれないけど、私にはね。と言いながらゆっくりとこちらに人差し指を向けてくる。
「見えるの。"ソレ"が」
「…!」
その人差し指は、確かに俺の背中に、羽に、向けられていた。
「へぇ…驚いたな」
あくまでも、余裕を持っているようにして呟いた。
悪魔だけに。
…うん、忘れてくれ。
「ふふ、私、普通じゃないから」
そいつはもう一度笑ってから、プールサイドから出て行った。
その時。
出て行く寸前に、そいつの背中から薄っすら羽が見えた。
俺とは対照的な、純白の羽。
でもそれは何故か片方しか見えなかった。
「…へぇ」
自然に広角が上がる。
これは悪魔界にいるよりよっぽど面白そうだ。