第3章 夜
「んー…載ってないどこだ」
雪華の部屋を出て行ったあと、俺は悪魔界の図書館に来ていた。
ちなみに、今読んでいるのは『天空界の掟』。
なんで雪華が片羽しかないのか。それを知るためだ。
慣れない文字ばかりの本と、さっきからずっとにらめっこしている。
「おぉー?亜久斗じゃねーか、珍しいな、お前がこんなとこにいるなんて」
話しかけてきたのは図書館の管理人のおっちゃん。
「うるせぇなぁ、俺だって本読みたい時くらいあんの!」
「はははっ、読みたい本あったら俺に言えよー」
…そうか。最初からおっちゃんに言えばよかった。
さっきから掟の本をたくさん…でもないけど読んだ。
でも、天使の掟は何一つ載っていなかった。
まぁ悪魔界だから、もともと少ないのは承知なんだけどさ。
「おっちゃん!天使達の決まり事が書いてある本とかない?」
おっちゃんが顔をしかめる。
まぁそうだよな。
悪魔の俺が天使の決まり事を知りたいなんて。
普通変だ。
「やっぱり…ない?」
顔色をうかがうように聞いてみると、小さく「あるよ」と、顎でついて来いとやる。
俺は断る理由もないから、大人しくついていった。
たどり着いたのは、図書館の奥の奥。
おっちゃんが手に取った本はたかーい本棚の一番上。
なるほど。道理で見つからないわけだ。
「ほい」と俺に本を投げる。
落としそうになって、慌ててキャッチした。
「ありがと」
「そんなの見てどうするんだ」
「んーちょっとねー」
曖昧に返事をして、読書スペースに向かった。
『天使界掟全書』と記されたその本は中々分厚い。
だが、1ページ1ページ読むなんてことはしない。
俺は賢いからな。
目次を開き、それっぽいページを選出して、順に読んでいった。
すると、刑罰のところにそれらしき記事を見つけた。
ーーー片羽天使ーーー
天使が羽を折られるのは、重罪を犯した場合にかせられる刑罰である。
折る時は激痛がはしるので、片方だけか、両方かは、重罪の中でも罪の軽い重いを判断し行われる。
片方でも羽をおられた天使は人間として転生し、二度と天空界へは行き来できない。
ーーーー
「へぇ…重罪、ねぇ」