第3章 夜
あのヘンテコ転校生ーーー
いや、"悪魔"の言葉を私は帰り道思い返していた。
そう。私は天使。
天使だった。それは事実だ。
でも何故、それを気にするのか、疑問だった。
家に帰って、食事をしてお風呂に入ってもあの言葉が頭から離れなかった。
"なんで片羽なんだ?"
…それは…。
自室のドアを開ける。
開けたらすぐに窓が見える。
いつもは真っ暗で、街灯の明かりがちらほら見えるだけのはず。
でも今日は違った。
見覚えのある、黒に紫が入ったような、なんとも言えない色をした羽。
悪魔が、私の部屋にいた。
フヨフヨと中途半端に浮きながら。
「よぉ」
なんだかため息が出る。
「はぁ。つけてきたの?犯罪よ」
「今の姿は人間には見えないさ。今お前は窓に向かって一人でしゃべっているぞ、ダイジョーブか?」
からかうように、自分の頭に人差し指を向けてニィと笑う。
なんかむかつく。
「あなたに喋ってるの」
「普通の人から見たらお前変人だぞ」
「…」
なんなの。ホントにむかつく。
変人はどっちよ。
イライラを抑えるように私はベッドに入った。
上半身を起こして、布団を下半身だけにかける。
なんで私、こんな奴と話す体制作ってるの。
「…ていうか、あなたこそなんで人間のフリして学校来てるのよ。そっちこそ、頭ダイジョーブ?」
さっき悪魔がやっていたジェスチャーをそのまんま真似て言ってやる。
怒るだろうか。
そんなドキドキの期待は、あっさりと裏切られた。
「それはーー」
ここまで言って、悪魔は私との距離を一気に詰めた。
「お前に興味を持ったからさ」
突然のことに、思考が停止した。
全然意味がわからないのに、顔が熱くなった。
きっとお風呂の熱がまだ残ってたんだ。
のぼせたのかな。
なんて、変な理由を考えて、顔が熱くなった理由を正当化しようとした。
こんなことで動揺なんてしてられない。
相手は悪魔なんだから。