【R18 ハイキュー!!】【短編】烏養繋心のファーストラブ
第1章 烏養繁心のファーストラブ
『人の店の中でヤるって、どんだけ焦ってんだ、おまえら』
大げさに呆れた声を出すのが精いっぱいだった。
演技がばれなかったのは、年の功か……
「あーあ」
もう何杯目かわからないハイボールをぐいっと飲み干すと、ちょうど横を通った店員におかわりを頼む。
「おいおい、ちょっと今日飲みすぎじゃないか?」
「なんかあったのか?」
「別に……フラれただけ」
「はぁ?」
シンクロして呆けた顔すんな!
向かいに座る滝ノ上と嶋田はぽかんと口を開けていたが、すぐにゲラゲラ笑いだす。
「何言ってんだよ、昔から女っけゼロのくせに」
「バカ、嶋田、妄想で、だよ、妄想」
「もっとマズいだろ、それ」
ガハハハハ……
ギロリと睨んだが効果なし。2人も相当酔っている。
フラれた、俺。それは事実だ。
あいつとセフレのような関係だったことは、嶋田も滝ノ上ももちろん知らない。
誰も、……澤村以外は。
何度も、キスした。
何度も、セックスした。
何度も、好きだと言いそうになった。
『本気で、つきあってくれ』
あの夜、そう告白するつもりだった。
なのに……
「やっぱ女って黒髪が好きなんだな」
「なんだよそれ。おまえ本当にフラれたのか?金髪を理由に?」
「なんだそりゃ」
ガハハハハハ……
「おまえら、うるせぇっ! 友達が失恋したってんなら、少しは慰めるとかしろっ!」
『彼女のこと、取った形になってすいません。でも俺、こいつだけは譲れないんで』
乱した制服を着なおした澤村に礼儀正しく頭を下げられた。
真っすぐな視線に、負けた。
『別に、俺は本気じゃねぇし。勝手にしろ』
すげぇかっこ悪いセリフ。
でもそれが精いっぱいだった。
誰か好きなヤツがいる。抱くたびに、なんとなく感じていた。
でも、あいつの仕草や視線に惑わされた。誤解しそうになった。
こいつも俺のことを好きなんじゃないかって……
「まあまあ繋心、飲め飲め」
「そうそう、何か知らないけど、ヤなことは忘れて飲もうぜ!」
酔いすぎた滝ノ上が、立ち上がってEXILEもどきの踊りを披露し始める。
「ばんざーい、君に会えてよかった~」
「古っ!」
「滝ノ上、それ恋愛成就した歌だろ」
「だからだろ。次頑張れよ~繋心!」
次ねぇ……そんな簡単に忘れられねぇし……真剣恋だぜ、おい。