My important place【D.Gray-man】
第40章 パリの怪盗
「駄目だ」
「そこをなんとか…」
「駄目ったら駄目だ! なんで見ず知らずの余所モンに怪盗Gの情報を漏らさなきゃならん。あんたらが怪盗Gの仲間じゃないって保障は何処にもないだろ!」
うわ、物凄い疑心暗鬼になってる。
寝不足なのか、隈のあるギラギラと据わった目で睨み付けてくる警察署の人を前に、思わず言葉を呑み込んだ。
この警部、顔怖いなぁ………ユウで見慣れてるからそこまで抵抗はないけど。
ガルマー警部というこの人物は、パリ警察署の怪盗G捕獲担当者らしい。
「だから言ったじゃないですか。俺達は"黒の教団"の者ですって」
「身分証明も何もない奴の言うことなんか信じられるか。もう帰った帰った!」
「あ、ちょ…っ」
ジジさんの言葉にも、全く耳を貸してくれない。
ぐいぐいとガルマー警部に背中を押されて、警察署の外に追いやられる。
こういう時はエクソシストがいないのは不便だなぁと思う。
あのローズクロスの付いた団服の重要性が身に沁みる。
というか私達のマントにもそれ付けたらいいんじゃないかな。
"黒の教団"の証である十字架を基にした、ローズクロスの紋章。ヴァチカン軍事機関の象徴。
認知度のあるそれを各国で見せただけで、大概の組織は協力的に力を貸してくれる。
まぁそれだけ効力があるものだから、悪用されないようにエクソシストしか身に付けることは許されていないんだけど。
「じゃあな! 二度と来るなよ!」
「あ、オイ!……ったく! 少しは話くらい聞けっつーの! それでも警察か!」
「まるで取り合ってくれませんでしたね…」
結局あれよあれよと警察署の外に追い出されて、怖い顔のままバンッ!と勢いよく扉を閉められてしまった。
「情報、聞けなかったんですか?」
「ああ…うん」
「警察の癖に心の狭い奴だな」
それバズが言っちゃ駄目。
外で待機していたゴズ達に苦笑混じりに頷いてみせる。
これじゃあちゃんとした怪盗Gの情報は掴めない。
また地道に街で聞き込みするしかないかな…。
「仕方ない、今度は皆別れて聞き込みを──」
「まぁ待て待て」
仕方ないとその提案を口にすれば、ぽんと肩に手を置いて止められた。
止めてきたのは、何故か笑顔のジジさん。
…なんで笑顔?