My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
「人は欲に塗れた生き物だ。知識という他の生き物が持ち得られなかったものを手にしたが故に、私利私欲に塗れておる」
言葉はどこか人を見下すようなものなのに、その口調は酷く優しい。
私に向けられた、金色の目と同じに。
「じゃがそれでいいのだよ。その"欲"は誰しも当たり前に持っておるものだ。誰に、どのような形で向けるかによって、他人の目も変わる。ある者には美しく映るものも、またある者には醜く映る。"欲"とはそういうものだ」
…不思議な言葉だった。
でも不思議と理解できた。
「誰にでも善に見えるものなどない。誰にでも悪に見えるものなどないように」
ワイズリーの言葉は、方舟に乗り損ねた時と、アレンと夜中に話した時に、感じた思考と似てたから。
その人が欲するものであれば"良いこと"として映るけど、そうでなければただの"はた迷惑"にしかならない。
「うむ。そしてワタシには、御主の思いは真っ直ぐに映ったのだ。例え向ける相手を失くしても、その者達の存在によって植え付けられた恐怖を抱えても、捨てずに思い続けている。なんて純で強い愛なのだろうと思ったのだよ」
「……」
「沢山のものに向けられずとも、一度抱えた思いは真っ直ぐに相手を思いやっておる。その者の幸せを切に願っておる。…主はアレン・ウォーカーではない、月城雪だ。主しか持ち得ていない魅力はある。だからそのユウとやらも惹かれたのだろう?」
…あ。
そうだ、そんなこと…前に言ってた。
アレンとは違うだろって。
私の思いを、考え方を、嫌だなんて思わないって。
そう、はっきりと言ってくれた。
「……」
なんだか気恥ずかしくなる。
体がもぞもぞする。
でも嫌じゃない。
胸がほんのりと温かくなる。
ちゃんと私自身を見て、認められた気がした。
上辺だけじゃない、私の根本を見て、認めてくれた気がした。
ユウがそうやって、私を見てくれたように。