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My important place【D.Gray-man】

第39章 夢現Ⅲ



「はぁ…教団なんかに身を置いてるから。少年と同じで、面倒な立場で生まれてきちまったな…」



 深々と溜息をつくティキの言葉に、意識が止まる。

 面倒?



「…面倒じゃないよ」

「ん?」



 気付けば言い返していた。

 …確かに教団でいい思い出なんてあまりない。
 最初に訪れた時は、私には得体の知れない怖い場所でしかなかった。
 唯一強く求めた両親の存在がなければ、とっくに心だって折れていた気がする。
 …でも。



「今は…此処にいてよかったって思えてるから。見ていたい人を、見つけられたから。面倒なんて思わない」



 嫌なことも多かったけど。
 死と隣り合わせの職場だけど。
 それ全部ひっくるめて、受け入れられるくらいの人を見つけられたから。



「……真っ直ぐだのう」



 そんな私を見るワイズリーの目は、優しかった。



「昔と変わらぬ。主の根本にある思いは、常に真っ直ぐだ」



 私の昔なんて知ってるはずないのに。
 親身にそう呟くワイズリーの言葉は、不思議と偽りなんてなく聞こえた。

 なんでだろう…。
 この人、不思議な人だな。
 見た目は若い青年の姿なのに、随分と年上の人と話してる気になる。
 老人臭い喋り方だからじゃなく、その中身で。



「…別にそんな綺麗な思いなんて持ってないよ」



 でも、そう言ってくれるのは嬉しいけど…私はアレンとは違うから。
 そんな褒められるような性格はしていない。

 命を持たない人形の為に涙を流せたり、疑心暗鬼の目を向けてくる教団の仲間を命を張って守ろうとしたり。
 そんな綺麗な思いを私は持っていない。

 本当に欲しいものは、いつも手に入らなかった。
 だから望むことをやめた。
 周りに期待なんかせずに、一人で生きていこうと決めた。
 …そんな私が初めて他人に抱えられた想いだから。
 その想いに気付いて、引っ張り出してくれたのは他ならない、その欲した人だったから。

 欲しいものを欲しいと言う。

 私には難しかったことを、当たり前に促して、そして与えてくれた。
 だから絶対に離したくないと思った。
 ただそれだけ。



「それが真っ直ぐだと言うのだよ」

「え?」



 …あ、また。
 まるで私の心の声が聞こえてるかのように、言葉を返される。

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