My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
ほう、と安心したように、私を見た青年の顔が息をつく。
再び額に手が当てられる。
今度は至極ゆっくりと、丁寧に。
「主のメモリーはノアの"怒り"だ。ワタシらの中でも一層強い思いを抱えている。じゃからワタシの"智"やティキの"快楽"よりもずっと、対象者への負担は重い」
額に手を当てたまま、ゆっくりと説明をしてくれる。
私の不安を取り除くかのように。
ちゃんと、私にもわかるように…
「………なんの話?」
待って。前言撤回。
全然わかんない。
一体なんの話それ。
「全然意味がわからないんだけど…」
「…のの」
意味がわからず首を捻れば、目の前の青年は肩をがっくりと下げた。
「やはりか」
やはり?
やはりって何。
「まぁそれは後だ。先に御主のメモリーを閉じよう」
「閉じるって…」
「その頭ん中の痛みを止めるってことだ。まだ不安定だろうし」
不安定?
私の体を抱いたまま後ろから付け足してくるティキ。
そこへ振り返る前に、額に重ねられた青年の掌が、じんわりと熱を帯びた。
「むむぅ…」
私の額に手を当てたまま、青年が金色の目を瞑る。
するとターバンの下にある額の三つの目玉のような模様が、淡く光り出す。
その光が強さを増すと、頭の中はなんだかすっきりとしたものへ変わっていった。
まるで憑き物が取れたような、そんな感覚。
「──どうだ、気分は。まだ何か違和感はあるか?」
「…ううん」
やがて治まる光に、額に触れていた手がそっと離れる。
目を開いて問いかけてくる彼に首を横に振れば、にっこりと笑われた。
「ならば良い」
…あ…この笑顔も…見覚えがある。
優しい言葉と抱擁を感じながら、見たような気がする。