My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
「あの……ありがとう…」
説明してくれた意味はちんぷんかんぷんだったし、理由もよくわからない。
だけど私の頭の痛みを止めてくれたことだけは、確かだったから。とにかくお礼は言わないと。
そう思っておずおずと口にすれば、金色の目はぱちりと瞬いた。
「どう致しまして、だのう」
そのままぽふぽふと頭を撫でられる。
老人臭い喋り方と言葉がやけに大人びてるから、あまり若さを感じさせなかったけど…にこにこと笑う顔は年相応に見えた。
「あの…貴方、名前は?」
「む。そういえばまだ名乗っておらんかったのう。ワタシは"魔眼"のワイズリー。ワイズリーで良いぞ」
さっきティキが呼んでいた名前だ。
聞いてもピンとはこない、知らない名前。
…やっぱり知らない人なんだ。
なのに…なんでだろう、どこか懐かしく感じる。
………というか"まがん"って何。
二つ名みたいなもの?
その額の目玉のような模様と関係してるの?
…ちょっと悪趣味なデザインだと思うよ、それ。
「悪趣味とは酷いのう。これは趣味ではないぞ。正真正銘、ワタシの"眼"だ」
「…え。」
内心ワイズリーの容姿にツッコんでいると、さらりとそんな言葉を返された。
今、この人…私の心の声に返事した?
声に出てたのかな…。
「うわ。また他人の頭ん中覗いてやがる。それこそ悪趣味だろ、やめろよ」
うげ、と後ろから心底嫌そうな響きの声が届く。
今度は振り返ってみれば、その声通りの心底嫌そうな顔をしたティキが見えた。
頭の中を覗く?
何それ……………というかずっとこの腕に抱きしめられてるんだけど、私。
そろそろ放してくれないかな。
「人を覗き魔みたいに言わんでくれるかの」
「現にそうだろ。お嬢さんのプライベート諸見してんだろ、どうせ」
「え。」
何その聞き捨てならない言葉。
思わずワイズリーをガン見すれば、にっこりと笑われた。
「ワタシはプライバシーは守るぞぉ」
うっわ嘘臭い笑顔。
さっきは年相応でいいなぁなんて思ったのに!