My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
「なんで……私…?」
辺りを見渡す。
緩く囲われたその腕の中から見えたのは、もう見慣れた無機質な部屋。
ユウの部屋だ。
そうだ、だって私はこの部屋で起きたばかりで…。
なのに何故か、ベッドの上で私を抱きしめているのは此処にはいないはずの人。
…なんで?
「え…何…どうやって…」
「それよりまずはその体を優先な」
「え?」
「ワイズリー」
私とティキしかいない部屋の中で、何処かに向かって誰かの名前を呼ぶ。
ワイズリー?
誰それ。
「やれやれ。まさかとは思ったが…いち早く気付けてよかった」
ティキとは違う、別の声が耳に届く。
誰もいないと思ってたのに。
振り返れば、最初から当たり前にいたかのようにベッドの上で胡坐を掻いて座り込む、ターバン姿の青年がいた。
…あれ。
この人……知ってる。
「間一髪だったのう」
見た目は若い青年なのに、老人臭い喋り方。
ティキと同じ褐色肌で、額には目玉のような模様。
ふわふわと癖ある白にも金にも見える色素の薄い髪に、巻かれた大きなターバン。
こんな一度見たら忘れない個性的な人、会ったら忘れるはずがない。
…でもどこか記憶は朧気だった。
確か…何処で会ったんだっけ…?