My important place【D.Gray-man】
第9章 黒の教団壊滅事件Ⅲ
トイレから飛び出た神田が、鋭い視線で辺りを見渡す。
だけど視界に動くものを捉えないのか、困惑気味にその場に立ったまま。
「どういう…」
ことなのか。
一瞬訳がわからず、立ち尽くす。
──ハァアアァ…
その時、首のすぐ後ろを生暖かい空気が触れた。
「ッ!?」
咄嗟に飛び退くように個室トイレから飛び出す。
飛び出し様に体を反転させて、見えたトイレの中は──誰もいない。
「なん、で」
「空耳か?」
そんなはずない。
確かにはっきりと足音は聞こえていた。
私一人じゃなく、神田も一緒に聞こえていたはずだ。
それに今、聞こえた首元への吐息は──
「…おい?」
訳のわからない現象に困惑していると、怪訝な神田の声が私を呼んだ。
振り返れば、幼い目は私の顔を見ておらず、見ていたのは背中。
「お前、それ…どうした」
何が。
言葉の意味がわからず、神田の視線を追うように、背中が映る手洗い場の鏡に視線を移す。
「何…これ」
見えたのは。私の背中にはっきりと付いた、赤く染まった人の手形だった。
息を呑む。