My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
「し…初心者コースでお願いします…」
「ねぇよ、んなもん。オマケで組み手も付けてやる」
「オマケ要らない!」
ごめんなさい、私が間違ってました。
軽い体慣らしなんてとんでもない。
朝っぱらからユウ相手にそんなメニューこなしたら、青痣どころか血を見る気がする。
任務前に体力尽きる気がする。
というか私、別に日本刀扱ってる訳じゃないし。
素振りだけメニューから外してくれるとか…あハイ無理ですよねそうですよね。
ちょっと提案してみただけですすみません。
「…イッテラッシャイ」
「最初から大人しく寝とけ」
思わずカタコトで手を振れば、その反応が読めてたように溜息をつかれた。
まさかわざと言ったんじゃ…いやないな。
そういうことで嘘つくタイプじゃないし。
多分本当に全メニューやってるんだろうな…。
毎朝。毎日。
……人間業じゃないな、うん。
「うろちょろすんなよ。まだ早朝だ」
「うん。いってらっしゃい」
もう一度手を振れば、一度だけそこに黒い目が向いて静かに部屋を出ていく。
パタンと閉じるドアの音に、静寂が訪れる。
戻ってきたら起こすって言ってくれたし…大人しく甘えておこうかな。
ちょっと寝てから、朝の身支度しよう。
「……」
もふっと再びベッドに横になって、目を瞑る。
まだ少し残っているシーツの温もりに身を寄せながら、ユウの匂いが残る布団に包まる。
一人だけど一人じゃない。
そんな不思議な感覚で眠りにつくのは、とても心地良いものだった。
…幸せだなぁって思う。
そんな幸せに浸りながら、うとうとと再び微睡む。
──…スナ…
聞こえたのは微かな"声"。
「──」
目を開く。
横になったまま頭を持ち上げる。
朝というには早い時間帯。
薄暗い部屋を僅かに明るくしているのは、カーテンの隙間から差し込む微かな薄明かり。
そのカーテンの隙間。
僅かな面積が見える窓ガラスに
にんまりと笑う、白い人影を見た。
「……え」