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My important place【D.Gray-man】

第39章 夢現Ⅲ


─────────






























「雪」


 優しい声がする。
 少しひんやりとした手が、私の頬を撫でる。
 その微かな刺激に、ゆっくりと意識が浮上していく。

 微睡みながら薄らと開けた瞳に映ったのは。


「…ユウ…」


 愛しい人。


「起きたか」

「…ん」


 目を擦りながら、曖昧に返事をする。


「まだ朝には早い。このまま寝てろよ」


 頭をひと撫でされて、ギシリとスプリングが微かに鳴る。
 目元から手を離せば、体を起こしてベッドから下りるユウの姿が見えた。

 触れていた体温が離れていく。
 私に背中を向けて──


「っ」


 咄嗟に伸びた手が、その背中の服を掴む。
 くいっと小さな力で引っ張られて、ユウは足を止めると顔だけ振り向いた。


「なんだ」

「…え?」

「寝惚けてんのか」


 あれ。

 じっと見下ろしてくる顔に、段々と意識がはっきりしてきてはっとする。
 なんで引き止めたんだろ。
 ユウが毎朝森にトレーニングに出るのは日課。
 いつも朝見ていた光景だったのに。


「ごめん」


 慌てて手を離して、起き上がろうとすればぺちりと額に手を当てられた。


「寝惚けてんならまだ寝てろ。戻ってきたらまた起こしてやる」

「……うん」


 いつも朝が早いユウは、私より先に目が覚める。
 黙って出ていくことはなく、一度私に声をかけてくれてから、トレーニングに森に向かう。
 何度も見ていたそれは、もう習慣だったのに。

 …なんで止めちゃったんだろう。

 考えても理由はわからなかったけど…少しだけ、胸の奥がざわついた気がした。

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