My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
柔らかいスカート姿の女性
男性の身に纏っている団服に似た黒い服
話しかけているその横顔は、よく見えなかったけど…
優しく笑いかけているように見えた
その女性の声に反応するように、男性が顔を向ける
纏う長い黒髪と眩い光で、顔はよく見えない
でも何故か、その女性と同じに
笑っているような気がした
──ホントに?
──おじいさんとおばあさんになっちゃってもよ?
一言、二言
男性が口を動かすと
女性が嬉しそうに笑う
笑って尋ねるその言葉に、男性が手を差し伸べる
……あ
なんだろう
胸がざわつく
重なる手
黒髪の男性のものと、淡い髪色の女性のもの
手を握って歩き出す
私が立っている場所とは、真逆の方へと
……待って
知らない人なのに
わからない人なのに
胸の奥がざわざわする
不安
焦り
感じたのは、そんな負の感情
なんでだろう
「…っ」
呼び止めたいのに
呼び止められない
名前を呼びたいのに
その名前がわからない
待って
行かないで
止めないと
──何故?
だって
あの人は、きっと忘れちゃ駄目な人
そんな気がする
不安
焦り
胸の奥がざわざわと騒ぐ
私の心を駆り立てる
その思いのままに
何度も呼ぼうと口を大きく開けるのに
言葉にならない
──だが思い出せんのじゃろう
──ならばそれまでの者だということだ
それまで…?
……そうなのかな
そう?
…本当に?