My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
…忘れちゃったのかな
すぐそこまで出かかってる気がするのに
なんで思い出せないんだろう
……大事な名前だった気がする、のに
「…なんで…」
どんなに考えても出てこない名前
なんだろう…何故か不安になる
思い出せないことに、胸の奥がざわざわする
なんでだろう
その理由も、よくわからない
──思い出せんのは、そこまで気に止めていないからじゃろう
今度は知らない男性の声がした
…あれ…?
この声は何処かで聞いた気がする
──大事なことでないなら、憶えておく必要もあるまい
…そう、なのかな…
でも…大事だった、気がする
大事な人だった気がする
背中を向けてるから、顔は見えないけど
きっとその顔を見たら思い出せる
振り返ってくれたら
ちゃんと名前を
呼べる気がする
──ならば呼んでみよ
「……えっと…」
なんて名前だったっけ
必死に頭を回転させて考える
名前…最初は中々慣れなかったけど
当たり前に呼べるようになった気がする
最初は、躊躇しちゃったけど
呼べって、そう言ってくれた気がする
あの人の名前
なんだったっけ…
──ほうら
──早く呼ばぬと行ってしまうぞ
行ってしまう?
その声に悩んでいた顔を上げる
眩い光が差し込む、蓮華の茎が沢山生え揃っている風景
どこか幻想的にも見える其処に
一人立っている──……あれ?
違う
もう一人、誰かがいる
当たり前にその団服の人の傍に歩み寄る
柔らかいスカート姿の女性
あれは…誰?
──いつか、ふたりで
──一緒に見ることができたら
…あ
あの声
さっき聞いた、女性の声だ
優しそうな声
じゃあさっきの声はあの人のもの?