My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
──ねぇ、この花知ってる?
…知らない声が聞こえる
知らないけど、聞いてるとなんだか安心する
とても優しい女の人の声
──蓮華の花
…蓮華の…花?
──泥の中から天に向かって生まれて
──世界を芳しくする花なのよ
泥…そういえば、そうだった
蓮華は沼地でも花を咲かせることができるんだって──…
…あれ…そういえば
誰かに同じようなことを言ったことがあったっけ
教えてあげれば、"知ってる"って無表情に返してきた
……あれは誰だったっけ
確か…蓮華の茎が沢山生えた湖の畔で…
そんな話をした気がする
あまりに沢山、生えていたから
花が咲き乱れたら綺麗だろうなって、そう
見てみたいなぁって、そう
一面に咲いて──
──見たいなぁ
──一面に咲きほこっているところ
え?
「…?」
何処かで聞いた言葉だった
そう悟ると同時に、目の前が眩い光に包まれる
眩しくて眩しくて、咄嗟に目の前に手を翳した
「…あれ…」
眩しい世界
段々と目が光に慣れて見えてきたのは
一面に生えている、蓮華の茎
……此処、は…?
何処だろう、と辺りを見渡す前に
真っ黒な服に包まれた背中を見つけた
銀色の装飾と赤い小物の付いた団服
同じように赤い髪紐で長い黒髪を一つに束ねた、高い背
あれは──…あの人、私知ってる
なんだか見覚えがある
顔、見たことがある気がする
そう思うと、その顔が気になった
振り返ってくれるかな
名前、呼んだら
「……あ、れ…?」
そう思って口を開くのに
何故か名前が出てこない
…あれ…なんで…
「………誰、だったっけ…」