My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
「手は出さない。だから此処にいろ」
甘いムードもへったくれもない。
ぶっきらぼうで優しくもない。
抱きしめてくる腕だって、抱擁と言うより逃がさないように捕まえてくるもの。
「……」
なのに…そんな言動に胸が詰まってしまう私は、もう重症だと思う。
……これもきっとユウ限定なんだろうな。
「…わかった」
傍にいたいって気持ちは、私もあるから。
ここでも勝ってしまったのは、私自身の"想い"の方だった。
「此処にいるよ」
応えるようにその胸に身を預けて肩の力を抜く。
すると束縛するように囲っていた腕は、少しだけ力が抜けた。
ユウの手は少しひんやりとしているのに、こうして包まれると凄くあったかい。
その温かさに浸るように背中を預けたまま、肩に乗ったユウの顔を伺うように目線を──
「──!」
ビクリと体が跳ねた。
「どうした?」
「………や…なんか今、窓の外で何かが動いたような…」
後ろからユウに抱きしめられたまま、私の目はカーテンの取り付けられた窓を凝視していた。
視界の隅に映っていた窓。
その僅かなカーテンの隙間の暗い向こう側で、一瞬白い何かが動いたような気がした。
…気がしただけで気の所為かもしれないけど。
なんだか一瞬ぞわっとしたのは、気の所為じゃない気がする。
「……」
この部屋って結構な高さだったよね…じゃあ鳥?
でも夜だし…梟とかかな…。
……ま…まさか幽れ……いいいやいやいや。
ないないない。
「…お前」
「え。何その顔」
思わずぶるりと体を震わせれば、呆れ気味の声が届く。
振り返れば、それこそ思いっきり呆れた顔で見てくる目とぶつかった。
なんですかその目は。
「…はぁ」
「え、ユウ何して…っ」
そして溜息をついたかと思うと、徐にベッドから立ち上がり窓へと向かう。
そんなユウは私の静止も聞かずに、カーテンを掴むとシャッと左右に潔く開いた。
閉められた窓ガラスの向こうは真っ暗闇。
新本部の周りは森が囲ってるから、街明かりもない外の闇に窓ガラスが映し出しているのはユウの姿だけ。
それ以外は何もない。
……あれ。