My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
くるりと背を向けてドアに向かって一歩踏み出す。
「じゃあ明日の任務頑張って──」
がしっ
だけどそれは一歩だけで、それから先は阻まれた。
……後ろからしっかりと私の手首を掴んだ、誰かさんの手によって。
「……」
「……」
え、なんで掴んでくるの。
なんで止めるの。
振り返るのが怖い。
欲を含んだ目なんてしていたらどうしよう。
今の私じゃ抵抗できる気がしないんだけど…!
「…何…?」
振り返らずに、恐る恐る問う。
……しないからね。
その為の奉仕だったんだから。
このままベッドインなんてしないからね!
「…いろ」
「はい?」
「此処にいろ」
ぼそりと呟きが聞こえたかと思えば、手首を引き寄せられる。
唐突な引力に傾いた体は、すとんとユウの足の間に座り落ちてしまった。
同時に後ろから回された腕が、私の体を閉じ込める。
「いろって…つ、続きは任務の後──」
「しねぇよ」
思わず身を捩れば、腕の束縛が強くなる。
顔の距離が近過ぎて表情は見えず、肩にかかる吐息しか感じられない。
「これ以上しない。此処にいろって言ってるだけだ」
「で…でも、」
それじゃ意味がなくなってしまう。
私が今回回避した本当の理由は、此処で一泊しない為なのに…!
………でも嘘ついたのバレたら怒られそうだから、そんなこと言えない。
「ユウは明日朝から任務でしょ? 一人でゆっくり寝た方が…」
「前に言っただろ。お前に触れてると落ち着くって」
それは…言ってたけど。
「手は出さないって言ってんだろ」
「でも……それってまた下手したら…」
その…欲が出ちゃったりするんじゃ…。
なんとなく言い難くてもごもごと言葉を濁せば、もすっと肩に顎が乗る感覚。
同時に溜息が耳に届く。
それ、ちょっとこそばゆい。
「うだうだうっせぇな。傍にいたいって思うのにあれこれ理由付ける必要あんのかよ」
……出た。
オブラート皆無な発言。