My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
「オラ全部吐き出せ」
「んぷっ…ら、らした…っらしたはらっ」
口の中に指を突っ込まれて、唾液混じりなものを全て残らず掻き出される。
出した、出しましたからっ
そんな口の中で指掻き回さないで!
「ったく、経験ない癖に無茶してんじゃねぇよ」
溜息混じりに覗き込んでくる顔は、まだ少し上気していたけど、あの凄まじい色気は消えていた。
あ、イく瞬間の顔ちゃんと見たかったのに…驚きで吹っ飛んじゃってた。残念。
…まぁ、でも。
「…ユウ、」
「んだよ」
「きもち、よかった?」
再度問いかける。
最後は恰好付かなかったから、ちょっと情けない笑みで。
すると質問が予想外だったのか、真っ黒な目を丸くさせたユウの手が──…ぺちりと。私の顔を覆った。
…ちょっとそれ今日多くないですか。
「ユ──」
「黙ってろ」
え、なんで。
「今は何も言うな。動くな笑うな顔見せんな」
えええなんで!
横暴過ぎる物言いに反論したくなったけど、視界を閉ざされた中で聞こえた声は威圧があって逆らえなかった。
すると深呼吸するような吐息が耳に…んん?
何してんの?
「はー…」
深々と最後に深い吐息が聞こえて、ゆっくりと手が離れる。
見えたのは、いつものユウの顔。
「…気持ちよくなけりゃ、出したりするかよ」
ぼそりと投げかけられた言葉は、さっきの問いへの答え。
ユウらしい素っ気ないものだったけど…そっか。そうだよね。
「なら、よかった」
つい笑みが漏れれば、ぺちっと軽く額に手を当てられた。
叩くような仕草だけど叩いてない。
「…ったく」
溜息混じりに呟く声にも棘はない。
あ…多分、怒ってない。
呆れてもない。
これは受け入れてくれてる仕草だ。