My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
「だから言っただろ。しっかり付けねぇと残らねぇよ」
「そんなこと言ったって…難しいよ」
「じゃあいいんだな」
「え?」
「虫除け」
「……」
…それは……よくない、けど。
美女に釣られるような性格じゃないから、そこはあんまり心配してないけど。
でも暴君な中身もカバーしてしまうくらいの美形の持ち主だから、そこの心配はある。
ユウから行かなくても周りから寄ってくる異性は多い。
思わず口籠れば、くすりと目の前の薄い唇が弧を描いた。
「…俺はお前からなら、貰いたいと思うけど」
ユウの手が私の首筋に触れる。
さっき吸い付けられた跡をなぞるように、指先が肌を掠める。
優しい声で誘ってる。
踏み切れない私を促してくれてる。
そういえば…いつもそうだ。
こういう時、こうやって行動に移してくれるのはいつもユウで、貰っているのは私。
中々動けない私を促してくれるのも、手を引いてくれるのも、ユウの方から。
…私は受けて貰っているばかり。
私だって、ユウに与えたい気持ちはある。
「……痛いって言っても知らないからね」
綺麗な首筋に手を添えて、意を決して顔を寄せる。
顔は見えなかったけど、笑う気配は確かに伝わった。
「余裕」
そう、短い言葉だけ返して。
そんなユウの首に、顔を少し傾けて唇で触れる。
今度は一つ一つ、跡を刻むようにしっかり吸い付いては目で確かめる。
でもどんなに跡を付けても簡単に薄れていって、綺麗な首筋は綺麗なまま。
……くそぅ。
なんか悔しい。
どんなに強く唇で刻んでも残らない跡は、まるで私のものにはならないと言っているようで。
気付けば躍起になって、かぷりと噛み付いていた。
手を置いていたユウの肩が、ぴくりと揺れる。
その些細な反応が嬉しくて、ついあむあむと甘噛みしてしまう。
別に噛み癖なんてないけど…これ嫌いじゃないかも。
自分の行為で反応を示してくれるのは嬉しい。