My important place【D.Gray-man】
第39章 夢現Ⅲ
「…ごめん」
「別に嫌だなんて言っちゃいない。それくらいの跡なら、残せるって言っただけだ」
ユウの手が私の手首を掴む。
そのまま、導かれるように触れさせられたのは──…傷一つない綺麗な首筋。
「試してみるか」
「え…ゃ、やだよ、爪立てるなんて」
そんな傷付けるような行為。
ユウのくれた愛撫のような跡とは違う。
それじゃあまるでSM行為だから。
私そういう趣味ないから。
「私は…ユウみたいにしたいなって思っただけで」
「俺みたいに?」
「…………口付け」
いつも貰ってばかりの行為だったから、してみたいって思いはあった。
口走ってしまったのは、逃げてばかりの自分の反省もあったのかもしれない。
…絶対、顔赤いだろうなぁ。
小さな声で発した言葉は、ユウの耳に届いていたらしい。
掴んでいた手首を離されると、徐に自身の襟首のボタンをぷつりと外していく。
チャイナ服のボタンが外されて、きっちりと隠している首の根元まで露わになる。
喉仏と鎖骨が見える、綺麗な首筋。
…なんだろう、なんか…ドキドキするんですけど。
「ん」
短い声で促される。
サイドの長く垂れた黒髪を避けるように、片手で流しながら軽く斜めに顔を傾けて。
首筋を見せて一言声を発してるだけなのに…妙に色気を感じるんですけど。
その流し目っぽいのやめて下さいなんかえろい。
凄い色気ありますよユウさん。
女性だけじゃなく男性も虜にしそうですよ。
…流石教団一の美形の持ち主。
「やんのか、やんねぇのか」
そこまでしてくれたユウに、しないなんて言えなくて。
というか…無防備に曝け出された首筋から、目が離せなくて。
気付けば薄い皮膚の覆う肌に顔を寄せていた。
顔を寄せると微かに香る。
ユウの匂いに包まれる感覚。
…これ、好きかもしれない。
そのまま控えめに首の付け根に唇で触れる。
いつものユウを真似るように、口を窄めて吸い付いた。
僅かに顔を離して見れば、肌色にほんのりと映える赤い色が──
「………消えた」
肌に咲いていたのは瞬くような時間だけだった。
すーっと溶けるように消えていく跡に思わず唖然。
……凄い再生能力です。