My important place【D.Gray-man】
第38章 幾哀心
なのに何故かユウと一緒に寝ると、不思議とそんな不安は薄れてしまう。
全く感じない訳じゃないけど…それ以上に、きっと意識してしまうものが目の前にあるから。
朝起きて、最初に確かめるのは自分の肌の色じゃない。
朝が早いユウはいつも私より先に起きていて、名前を呼んで起こしてくれる。
微睡む意識の中で、優しく肌を撫でてくれるひんやりとした手や落ち着いた低い声は心地良かった。
目を開ければ当たり前のように望む人が傍にいて、私をその目に映して一日の始まりを告げてくれる。
そんな何気ない朝は、今まで経験のなかった私の心を優しく包んでくれた。
…"幸せ"っていうのかな。
「……」
そんな温かいものを知ってしまうと、つい足はユウの部屋に向いてしまう。
でも毎日寝泊りする訳にはいかないし……その…ただ寝るだけじゃない日も、あるし…。
………うん。
私より遥かに体力のあるユウだから、あれに毎回付き合ってたら精根尽き果ててしまう気がする。
「…今日は行くのやめとこ」
うんうんと頷いて意思を固める。
夕飯食べてお風呂入って寝よう。
外勤の任務も控えてるし、体力付けておかないと。
「ユウはもういるかなぁ…」
今日は非番だったみたいだし、もう食堂に顔見せてるかも。
そんなことを考えながら、再び歩みを進める。
自然と軽くなる足取りで、食堂を目指した。
「くくっ」
聞こえた微かな笑い声は、後ろから。
人がいたなんて気付かなかったから、誰かと振り返って。
「"ユウ"、か」
見えたその人は、瞑っていた片目を開けてくすりと笑った。
…げ。