My important place【D.Gray-man】
第8章 黒の教団壊滅事件Ⅱ
「なんで聞かなかった」
「…近付くなって、言われたから」
誰に、とは言わなくても、神田のことだとは本人も気付いたらしい。
僅かにその眉間に皺が寄る。
「ったく、」
はぁっと大きな溜息をついて、あっという間に神田は呆れた顔をした。
「馬鹿じゃねぇの」
「ぅ。」
きっぱりと告げられた言葉は、ずんっと私の頭に落ちる。
凹むから。
そんなにはっきり言わないで下さい。
「馬鹿過ぎんだろ」
「に、二回も言わなくていいんじゃない」
結構傷つくんだから、そんなしみじみ言われると。
「"第二使徒"」
だから──……え?
「第二…しと?」
いきなり聞き覚えのない単語を発せられて、思わず覚束無い口調で繰り返す。
何、それ。
「後は調べるなりなんなり、自分でしろ」
だけどそれ以上、神田は応えずに鬱陶しそうにそれだけ告げると背を向けた。
なんだろう、知らない言葉だけど。
もしかしたら神田の体と関わりのあることなのかな。
「…第二使徒」
もう一度、口の中で小さく呟く。
意味も何も知らない言葉だけど、それは確かに神田なりの"応え"だった。
拒絶されなかった。
そのことだけが、漠然と今の私に感情を吹き込んだ。