My important place【D.Gray-man】
第8章 黒の教団壊滅事件Ⅱ
「なんでそこまで知りたがる」
再度、神田に問われる。
じっと見返してくる黒い眼は探るように。
…言わなきゃ。
ちゃんと伝えなきゃ。
私が、神田のことを知りたいと思った理由。
「…っ」
言わないと。
そう心を急かすと、口が開く。
その勢いのまま、私は思いを吐き出した。
「わ…っ……わかりません…」
「………は?」
思いっきり、心の内を。
ご め ん な さ い。
ちゃんとした理由を伝えたいのに、私の中の思いは漠然としていて、それを言葉にして吐き出すことができなかった。
思わずへなへなと脱力気味に突っ伏す私に、呆れ混じりの唖然とした神田の声が届く。
私の馬鹿…!
大事な時に言葉が出てこないなんて…!
「わかんねぇって…自分で言い出したんだろ」
「だって…本当に、わかんないから…」
顔を床に押し付けて突っ伏したまま、ぽそぽそと自分の本音を吐き出す。
「助けてもらった恩とか、任務仲間だからとか、そんなんじゃないよ。ただ…もっと、ちゃんと神田のことを見たいと思ったの。目を背けてきたこと、沢山あるから…今度は、逃げたくないって思った」
それは根本の理由も明確じゃない、ただの言葉の羅列。
説得力もなにもない、ただの私の本音。
それはなんとも情けなくて、幼いものだった。
「私をわかってもらおうとは、思ってないよ。でも、神田のことが知りたい」
歩み寄って欲しい、なんて。
そんな贅沢は言わないから。
「"神田ユウ"って人のことを、ちゃんと見ていたい」
ぽそぽそと紡がれた言葉に、神田の返事はない。
私が黙り込んでしまえば再び沈黙ができる。
…だからこの沈黙が怖いんです。
「…検査、」
床に顔を押し付けているから、神田の顔は見えない。
だけど小さく届いた神田の声は。
「検査、したんだろ」
予想していなかったものだった。
「コムイに俺の体のことを報告して、検査入院させられたのは聞いた。その時に聞かなかったのかよ」
「ぁ…うん。聞かなかったというか…聞けなかったというか…」
恐る恐る顔を上げる。
暗がりに見えた幼い神田の顔は、眉間に皺を寄せたり難しい顔はしていなかった。