My important place【D.Gray-man】
第8章 黒の教団壊滅事件Ⅱ
AKUMAのウイルスに侵された時、神田は迷いなく私に血を飲ませてくれた。
まだAKUMAが潜んでいるかもしれない危険な場所で、六幻を放ってまで私を助ける行為は、ある意味自殺行為に似ている。
そんなこと今の言葉通りの神田ならきっとしない。
恐る恐る告げた私の言葉に、神田は幼い目を見開いた。
まるで今言われたことに、自分自身で驚いているみたいに。
「神田の体のこと、私は何も知らないけど…助かる保障なんて、きっとなかったんだよね」
まさか効くとは、と私を背負って口にしていた神田の言葉を思い出す。
きっと助かるかも半信半疑で、それでも私の為に行動してくれたんだ。
「なのに助けてくれた。…ありがとう」
狭い通気口は、私の体じゃ座り込むこともできない。
うつ伏せで腹這いのまま、近くにある神田の顔を見る。
今なら、言えるかもしれない。
「私、知りたいんだ。神田のこと、ちゃんと」
暗い通気口の中ではっきりと神田の顔は見えなかったけど、私の言葉に僅かに反応を見せたのはわかった。
…逃げるな、私。
ちゃんと言え。
「っ…興味本位じゃ、ないから」
搾り出した声は、情けない程にか細くて。
「いつになってもいい。神田が言えるようになるまで…待つから」
静まり返った通気口の中で、私のか細い声だけが静かに響いた。
「……」
沈黙ができる。
暗くてよく見えない神田の顔は、真っ直ぐにこちらを見返したまま何も言葉を発さない。
また拒絶されるのかな。
そう思うと怖くて、つい俯きそうになる。
駄目だ。
逃げるな私。
自分に言い聞かせるように、何度も心の中で復唱する。
逃げるな。
今逃げたら──
「なんで知りたい」
静寂の中、神田の声が小さく木霊した。