My important place【D.Gray-man】
第8章 黒の教団壊滅事件Ⅱ
「………ラビ…」
「いつまでもうじうじ凹んでんじゃねぇよ!」
狭い通気口の奥底。
置いてきてしまったラビを思って、力なくうつ伏せに項垂れたまま嘆く。
そんな私に苛立った神田の罵声が、わんわんと通気口の中に響いた。
此処、響くから怒鳴るのはやめて下さい。
「だって…神田は、悲しくないの…」
神田のことを庇って、ラビはゾンビの仲間入りをしてしまったのに。
おずおずと顔を上げれば、暗くて狭い通気口の中に神田の顔が近くに見えた。
「悲しむ暇があれば、あいつの分まで生きることを考えろ。それが最大の弔いだろ」
そしてぴしゃりと、なんとも男らしいことを口にする。
…うん、でも死んでないからね。
ラビも他のゾンビ化人間達も。
「…神田は、強いね」
それは、自分勝手にアレンを強いと感じていた思いとは違う。
神田は強い。
それは身体的なものだけじゃなく、精神的なものまで含んで。
まるで確固たる信念を内に持って、行動しているように見える。
「どうしたら、そんなふうになれるの」
任務中でもその姿は垣間見えていた。
どんなに絶望的な状況下でも、死を受け入れようとした姿は見たことがない。
何がそこまで神田を生きようとさせるのか。
リナリーのように、黒の教団を"ホーム"だと大切にしているようには見えないのに。
「俺みたいになりたいのか、お前」
「……それは…」
神田の強さには純粋に憧れてた。
だから否定はできずに口籠る。
「なら、全部捨てる覚悟で生きることだな」
全部…捨てる覚悟…?
「譲れないもんなんて一つあればいい。他は仲間だろうがなんだろうが、踏み越えていく覚悟を持て」
オブラー卜に言葉を包まない神田は、嘘なんてつかない。
真っ直ぐに突き付けてくる言葉は、本音そのものだ。
確かに、神田は仲間であっても冷たい態度を取ることはよくある。
私も任務中に、何度見放されて置き去りにされそうになったことか。
だからきっと神田なら、誰であっても踏み越えていくんだろうけど。
「…でも…私を助けてくれたでしょ…?」
あの時確かに、神田は私を見捨てなかった。