My important place【D.Gray-man】
第8章 黒の教団壊滅事件Ⅱ.
一体何事か。
状況を把握しようと顔を上げたのと、ラビが小柄な体で神田に突進したのは同時だった。
「っ…!」
突き飛ばされるようにして、後方に弾ける神田の体。
ラビが庇ったのは誰からか。それはすぐにわかった。
「ッう…!」
がぶり、とラビの肩に喰い込んだのは、リナリーの──
「っラビ!」
咄嗟に駆け寄る。
ラビの肩に噛み付いてるリナリーの肩を、渾身の力で引き剥がす。
「グルル…」
低い声で唸る声はリナリーの口から。
「やべ…やっちまった…」
「ラビ、しっかり…!」
抱いた小さな体は力なく私の腕に凭れて、起き上がろうとしない。
「わり、先にギブするさ…」
「そんな…っ」
「っ…月城!」
珍しく神田が私の名を呼ぶ。
弾けるように顔を上げれば、
「ガルル…」
「グルルァ…」
ぞろぞろと、ドアの向こうから雪崩れ込んでくるゾンビ化人間が見えた。
どうしよう。
親身に聞こえたリナリーの声は、リナリー自身のものだったけど、その体は既にコムビタンDに感染していたらしい。
そんなリナリーを先頭に、ちらほら垣間見えたのは。
「嘘…」
捜していた、リーバーさんやコムイ室長の姿だった。
一気に愕然とする。
「ボサッとしてんじゃねぇよ!」
ガッ…!
私の顔に伸びるリナリーの手。
それを弾き飛ばしたのは神田の足払い。
「っでもラビが…っ」
「あー、うん。オレは平気、平気」
力なく私の腕の中でヒラヒラと手を振るラビの顔が、ピキピキと血管を浮かび上がらせる。
「悪ィさ、ユウ。雪、頼んだ…」
「…クソ、」
ラビの言葉に顔を歪めて悪態をついて、神田が私の腕を強く掴んだ。
「逃げるぞ」
「逃げるって、何処に──」
「いいから早くしろ!」
嫌だ、ラビを手離したくない。
ぎゅっと小さな体を腕に抱けば、腕の中のそれが身を捩った。
「うわ…雪から熱い抱擁受けるなんて…貴重さ…」
いつもの様子で軽い言葉を口にしながら、力なくラビが笑う。
こんな時までふざけるんだから。