My important place【D.Gray-man】
第8章 黒の教団壊滅事件Ⅱ
『ありがとう。あの時、何度も神田に助けられたから。感謝してる』
優しく、敬意のある声。
これがリナリーの声じゃないとしたら、誰なんだろう。
そう思えるくらい親身に感じるものだった。
それは恐らく神田も一緒だったんだろう。黙り込んだまま、考え込むようにじっとドアを見つめていた。
…きっとリナリーが言ったことは真実なんだ。
二人の間には幼い頃の出会いがあって、今まで培(つちか)ってきた絆みたいなものがある。
確かにリナリー相手だと神田も幾分、口調が柔らかくなっていた気がするし。
何よりあの手の早い神田がリナリーを叩くところなんて一度も見たことがない。
私には餅つき並みに叩いてくるのに。
…うん…なんだろう、この…月とスッポンの差は。
甘んじて神田の平手打ちは受けてるけどさ…うん。
なんか、ちょっと凹む。
「お前一人か」
『うん』
「周りに、感染した人間は」
『いないよ』
神田の問い掛けに、私は思わずラビと顔を見合わせた。
どうやら神田は声の主をリナリーと認めたみたいだ。
それだけ信用ある言葉なんだ、リナリーの言葉は。
なんだかんだ周りと距離を置いていても、神田はちゃんと此処で人との関係を築いている。
それに比べて私は…そんなふうに言える仲間が、果たしているのか。
そんなふうに思ってくれる仲間はいるのか。
そう思うと即答できない自分がいた。
ガチャン、
ドアの開く音。
──ズキ
「っ、」
暗くなる思考に、まるで連動するかのように額の傷が傷んで、思わず手で押さえる。
「ユウ…ッ!」
その時だった。
焦ったような、ラビの声が響いたのは。