My important place【D.Gray-man】
第37章 6/6Birthday(番外編)
―6月5日―
「うーん…」
飾ってある幾つもの小物を前に小さく呻る。
なんとか早めに仕事を切り上げて街に下りたはいいものの、これだと思えるプレゼントは中々見つからなくて。気付けば空はもうすっかり茜色に変わっていた。
そろそろ教団に帰らないと…。
ジェリーさんの所に、ケークサレの練習をしに行かないといけないし。
「良さげなもの、見つかりました?」
そこにひょこっと隣から白い頭が覗き込んでくる。
その口はさっき買ったクレープを、もぐもぐと美味しそうに咀嚼していた。
「それが中々…ごめんね、アレン。つき合わせちゃって」
「いいえ」
申し訳なく隣を見れば、そこには団服姿のアレン。
街に下りようとしていた時に、偶然任務帰りのアレンと出くわした。
買い物に行くと話せば、慌てたように一緒に行くとついて来てくれた。
…ジャスデビに捕まったこと、まだ気に掛けてくれてるんだろうなぁ。
本当、アレンのこういう優しさはじんとくる。
「僕が勝手について来ただけですから。雪さんは気にしないで」
「うん…でも、」
「それにクレープ買ってもらえましたし」
にっこりとクレープを頬張りながら笑うアレンは、年相応に見えて可愛かった。
…本当、アレンが恋人だったらここまで悩まずには済んだかもしれない。
何をあげても笑顔で喜んでくれそうだし。
「じゃあ、もうちょっと見て回ってもいいかな」
「勿論。それなら僕も別のコーナーでも見て──」
「あ、駄目だよっ」
離れたコーナーに向かおうとしたアレンの手首を、咄嗟に掴む。
「離れたら絶対迷子になるでしょ。傍にいて」
私の為に見て回ろうとしてくれたんだろうけど、ごめんアレン。
そのまま迷子になって捜す羽目になるのは目に見えてるから、一緒にいて下さい。
するとローマの任務時みたいに落ち込むかと思いきや。きょとんとこっちを見ていたアレンは、不意に照れ臭そうに笑った。
「…わかりました」
クレープをあっという間に口の中に押し込んで、両手でぎゅっと手を握られる。
「傍にいます」
私の言葉に頷いてくれただけなのに、その言動には思わずドキリとした。
…流石リナリーをも惚れさせる人。