My important place【D.Gray-man】
第37章 6/6Birthday(番外編)
「呼んでんだろ。来いよ」
…やっぱり。
微動だにしない私に、その眉間に僅かに皺を寄せて今度は意図を口にする。
いや…傍に行くのはいいんだけど。
…ユウに触れてるの…好き、だから。
でも…えっと、これってその…
「来いって言ってるだけだろ。何躊躇してんだ」
「…そう、だけど…」
「別に取って食ったりしねぇよ」
あ、そうなの。
痺れを切らしたのか、舌打ち混じりに伸びた手が私の手首を掴む。
引っ張られるけど、決して強くない力。
そう言われて拒む理由なんかなくて、促されるままに腰を上げて恐る恐る傍に寄った。
や…体を重ねることが、決して嫌な訳じゃないんだけど。
でも…その、恥ずかしさはまだある訳で。
大体まだ外も明るい時間帯だし。
そうじゃないならと、少しほっとした。
「色々ぎこちねぇんだよ。慣れろ」
「……ぅ」
引き寄せられたかと思えば、すとんと胡坐を掻いた足の間に座らされる。
バレンタインに橋の下で雨宿りをした時と同じ。
ただ違うのは、後ろ向きじゃなく横向きに座らされてるから…その…ユウの顔がはっきり間近に見える訳で。
…近い。
「だって…こういうこと、あんまりしたことないというか…」
肌と肌の触れ合いなんて、あんまり記憶にない。
それも自分が求めた相手となんて、本当にないから。
慣れない行動はどうしても気恥ずかしくなる。
「…俺だってねぇよ」
私を緩く抱いたまま、近くにあるユウの顔が溜息をつく。
「だからって逃げる理由にはならねぇだろ。…俺は割と気に入ってる」
「え?」
そっと額を重ねてくると、その長い睫を伏せて。
「お前の体温を感じてると、落ち着く」
ぽそりと小さな声で届いた言葉に、思わずトクンと胸は鳴った。
…ああ、それはわかる気がする。
その少し冷たい掌の温度に安心したのと同じ。
その心音を聴いて心地良く感じたのと同じ。