My important place【D.Gray-man】
第37章 6/6Birthday(番外編)
―6月3日―
誕生日といって次に思いつくものは、やっぱり誕生日プレゼント。
ケーキがプレゼントの代わりになるかもしれないけど、プレゼントはプレゼントとして別にあげたい。
ユウが身に付けていた数珠を預けてくれたように…形として何かを貰える嬉しさを、私は知ったから。
ユウにも同じように形として残るものをあげたかった。
「ゅ…ユウ、」
「なんだ」
ベッドに凭れて床に座り込んだまま、見ていた雑誌を膝に置いて隣を見る。
少し慣れないその名を呼べば。同じようにベッドに背を預けて座り込んで、目線は手元に落としたまま手短に返事するユウが其処にいた。
その手は慣れた様子で、発動前の黒光りする六幻の刃を手入れしていく。
「……」
「…なんだよ?」
「…………ご趣味はなんですか」
「は?」
そこで初めてその手は止まって私を見た。
…ユウが欲しいものなんて知らない。
だからといって、欲しいものある?なんて直球で聞けないし。
苦し紛れに問いかけた言葉はやっぱり不自然だったのか、向いた表情は訝しげなものだった。
「…なんだその会話の切り口。コミュニケーション障害か」
「いやいや、ユウ程のコミュ障じゃないから」
「あ?」
「冗談ですすみません」
ユウの声が低くなると即座に頭を下げて謝罪する。
〝危機を感じたらとにかく謝りましょう〟
これは"神田ユウ"という取説があったなら、第一に掲げるべき項目だと思う。
「で、ご趣味はなんですか」
「…マジで聞いてたのかそれ」
「真面目でしょ、この顔はどう見たって」
「……」
「え、なんでそこで黙るの。何その胡散臭そうな目」
「はぁ…ハイハイ」
「なんで溜息っ? そして凄く棒読み!」
再び手を動かして六幻の手入れを始めるユウは、全く私の言葉を信用していないみたいだった。
ちょっとそれ酷くないですか。
コミュニケーション図りましょうよ、それこそコミュ障って言われますよ…!