My important place【D.Gray-man】
第35章 抱擁
「それに普通だなんだ言うなら、俺だって普通じゃねぇだろ」
「それは…まぁ…」
そうなんだけど。
だからそういうことじゃなくて、
「大体"普通"ってなんだ。そんな枠組み、人によって違うだろうが」
うん、その通りなんだけど。
神田の言ってることは的を得てるけど。
…そうじゃなくて。
「だから…その、」
呆れた様子で言ってくる神田との雰囲気が、砕けたものだったからか。
さっきの迷いなき神田の言葉に、背中を押されてしまったからなのか。
わからない。
「…私、が」
わからないけど、一つだけはっきりしていたことはあった。
「……教団側の…人間じゃ、なくても」
言ったら後悔すること。
"ノア"という言葉は流石に喉奥でつっかえて、出せなかった。
それでもこんなこと、言う気はなかったのに。
自分の中でも不確定要素だらけで、しっかり伝えられるはずもないのに。
そんな状態で零したって、どうにもならない。
神田に迷惑をかけるだけ。
そんなこと、わかってたのに。
どうしようもなく、温かいものに
触れてしまったからなのかもしれない。