My important place【D.Gray-man】
第36章 紡
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「…………あ?」
朝。
早朝トレーニングに慣れてる体は、いつもの起床時間に勝手に目が覚めた。
薄らと開いた目に真っ先に飛び込んできた光景に、思わず口が勝手に悪態をつく。
「…またかよ」
見えたのは、少し離れた場所で寝ている雪の後ろ姿。
なんでまたベッドの隅に齧り付いてんだお前。
いつの間に逃げ出しやがった。
「本当にどこの小動物だ、テメェ…」
どんだけ隅っこが好きなんだよ。
溜息混じりにもう一度抱き寄せようとして、ふと動きを止める。
……今度は起きた時にしてやるか。
また寝相と称して逃げられたら堪らない。
──だから、
「さっさと起きろ」
ベッドに横になったまま、頬杖をついてその背中に声をかける。
それでもすぅすぅと聞こえてくるのは規則正しい寝息だけ。
…5分経っても目覚めなかったら叩き起こすか。
思わず苛々とそんなことを考えて、なんとなく気付いた。
どうやら俺はこいつに触れていたいらしい。
変に触り過ぎれば欲が出るが、こいつを抱いて眠りに落ちるのは心地良かった。
…安心する。
こいつに触れていると。
「……ん…」
そこに小さな声が漏れる。
はっと意識を目の前の光景に戻せば、僅かに布団から見えている小さな肩がもそりと揺れた。
「痛っ」
身動いだかと思えば小さくても確かな悲鳴。
…やっぱりまだ痛むのか。
女の体の構造なんて詳しく知らねぇが、男より厄介なのは知ってる。
「起きたか」
とりあえず声をかけてみる。
するとその見えている肩をと揺らして、雪は固まった。
…だから本当にどこの小動物だよ。