My important place【D.Gray-man】
第7章 黒の教団壊滅事件Ⅰ
「…お願いします」
差し出した足に小さな神田の手が触れる。
出血を抑えるようにシーツを押し当てると、そのままぐるぐると足に巻かれた。
見た目にはどうにも歪だったけど、歩く時に踏んだ物で足を損傷させないくらいの補助力はありそうだ。
「ありがとう」
素直に礼を言えば、ちらりと神田の目がこちらに向く。
いつもより幼く大きく見える黒い瞳。
それがじっと私を見た後、不意にまた足へと落ちた。
「此処は任務地じゃねぇんだよ。下手に傷を庇うな」
任務地じゃないって──…もしかして。
任務の度に怪我を負うのは、日常茶飯事のこと。
でも怪我する度に、いちいち任務遂行中の神田に伝えたことはない。
言っても邪険にされるのは目に見えていたから。
でも言わなくても洞察力のある神田だから…庇ってたの、気付いてたんだ。
「…ごめん」
思わず出た言葉は、いつも使う咄嗟の言葉。
──あ。
途端に神田の目が険しくなる。
「謝れつってねぇだろ。次から庇うなつってんだよ」
「い、いはいっいはいれす!」
小さな手が、ぎゅーっと強く私の頬を抓る。
痛いから、地味に痛いからそれ!
「…ふーん」
小さな神田の体を押し返すように頷いていれば、しみじみ呟くような声が聞こえた。
見れば座り込んだまま、まじまじとラビがこっちを見ている。
「よく任務組まされるから、どうかと思ってたけど。仲良いんさな、二人って」
はい?
「何言っ」
「阿呆なことぬかすんじゃねぇよ馬鹿兎ッ」
「イテッ!」
私の頬から離れた手が、ぺしん!と素早くラビの頭を叩く。
相も変わらず、誰にでもすぐ手が出るところは変わらないらしい。
「でもさ、ユウがそんなふうに手当てとか」
「それ以上ぬかしたら脳天カチ割るぞテメェ」
「ごめんなさいッ」
ゴキゴキと拳の骨を鳴らしながら凄む神田に、即座にラビは白旗を上げた。
確かにラビの言う通り、こんなふうに神田が手当てなんてしてくれたのは初めてだった。
…任務中じゃないからかな?
それでもつい口元が緩んでしまう。