My important place【D.Gray-man】
第7章 黒の教団壊滅事件Ⅰ
「なに笑ってやがる。気味悪い」
「ううん」
そんな私に、心底気味悪そうな目を神田が向けてくる。
でも生憎、神田にはそういう視線をよく向けられてきたから然程気にならない。
だから口元の緩みも隠さずに首を横に振った。
「なんでもない、気にしないで」
私の中で勝手に喜んでるだけだから。
「……」
すると顰(しか)めていた神田の表情が止まった。
幼くいつもより大きな黒い目が私を凝視する。
なんだろう。
「わお」
反応したのは神田じゃなくラビだった。
片目だけ見えるそれを丸くして、まじまじと私を見てくる。
なんだろう、二人して変なもの見るような…居心地悪いな。
「…なに」
居心地の悪さに怪訝に問えば、ラビはぱちぱちと幼い目を瞬いて。
「いや…なんか初めて見たと思って。雪って、そんな顔で笑えるんさな」
にぱッと、その外見に似合う砕けた笑みを零した。
そんな顔?
…どんな顔してたんだろう。
「普段の雪も悪くないけどさ。オレってば、そっちの方が好きかも。な、もっかい笑って?」
「もう一回って。私は玩具じゃないけど」
ずいっと顔を寄せてくるラビに、座り込んだまま思わず仰け反る。
顔、近いから。
「いいじゃんか、減るもんじゃないしさ。なぁ、もっ」
「煩ぇ黙れ」
ゴィンッ!
うわ。笑顔で催促してくるラビの頭に重たい拳が落ちる。
あの音は痛いな…。
「っ~…!」
「チッ」
頭を押さえてうずくまるラビに、拳を落とした神田は苛立ったように舌打ち一つ。
ちらりと一瞬目が合ったけど、すぐに逸らされた。
「ユウ、力入れ過ぎ…ッ」
「テメェが煩ぇからだ。さっさとリーバー達を捜しに行くぞ」
「え。やっぱ行くんさ?」
部屋のドアに向かう神田に、頭を押さえていたラビの呻きが止まる。
「当たり前だ」
ドアノブに手を掛けて、振り返った神田と目が合う。
「足手纏いになるなよ」
体は幼くとも、それは任務地に向かう時のような、いつもの神田の姿だった。