My important place【D.Gray-man】
第7章 黒の教団壊滅事件Ⅰ
そういえば何処も引越しの準備中だったっけ…。
数ヵ月前の大量のAKUMA襲撃により大破した教団本部。故に新本部へ引っ越す為に日夜、荷造りが行われていた。
私は入院中だったから、手伝いはできなかったけど。
「はぁ…お先真っ暗さ…」
がっくりと肩を落として落ち込むラビ。
と、不意にその頭が上がる。
「雪?」
「え?」
「足、怪我してんさ」
項垂れた視界で見つけたのか。ラビが見つめる先にあるのは、自分の足。
同じく見下ろせば、裸足で走っていた所為か、多分食堂で瓦礫を踏んだ時にでも切ったんだろう、足の裏が出血してた。
よくよく見れば、所々床に血の跡がついている。
…なんかこれもホラー感あって嫌だな…。
言われれば確かに、スライディング時に擦ったのか。じんじんと痺れのような痛みを感じ始めた。
事態の整理に頭が夢中で気付かなかったみたい。
「ん…うん。大丈夫。大したことないよ」
足の裏を見れば、丁度土踏まずを切っていたみたい。
だから走ってる時もそんなに痛まなかったんだ。
「此処に靴の代わりになるもんが、あればいいけど」
「そだね。…希望は薄そうだけど」
ぐるりと部屋を見渡す。
空き部屋となっていた其処は、タンスやベッドなど最低限の家具はあるけれど、洋服などの日用品は置いてない。
辺りを見渡してくれるラビに感謝して、大丈夫だよと笑いかける。
これくらい出血も大したことないし。
今、優先すべきことじゃない。
「チッ」
するとその場で、酷く馴染んだ舌打ちの音が聞こえた。
目を向ければ、眉間に皺寄せた神田が其処にいた。
「足手纏いになったら困るんだよ。止血くらいちゃんとしろ」
「でも血もそんなに…」
出てないから、と私が続けるのも待たず。神田は徐にベッドに寄ると、シーツに小さな手を掛けた。
ビリビリとなんなくシーツが引き裂かれる。
「足出せ」
これは…止血してくれるってことなんだろうか。
「なら自分で──」
「出せつってんだろ」
ぴしゃりと言い切る声はいつもより幼いけど、その圧はいつもと変わらず。
逆らわない方がいいと従うことにした。