My important place【D.Gray-man】
第35章 抱擁
暗い部屋。
ベッドの上で微かに響くのは、粘膜が触れ合う音。
「んっ…は、」
「…月城、もっと口開けろ」
「ぅ…」
咥内で感じる舌の動きに翻弄されていると、優しい声で促してくる。
それを拒否する理由なんてなくて、羞恥混じりに口を開いた。
そうやって優しい声で言わないでよ。
そんなふうに言われたら、逆らえないから。
「真似でいいからやってみろ」
再び唇が重なる。
深く口付けられて、咥内に潜り込む舌が上顎をくすぐる。
同じように舌を差し出せば、お互いの粘膜が擦れてくちゅりと微かに鳴った。
「ふ…、んぅ…っ」
舌が絡む。
お互いに求めている動きが、それだけでぞくぞくとした感覚を体に走らせる。
前は色々と急でいっぱいいっぱいだったけど…こうして応えたいと思う気持ちがあると、感じ方もまた違った。
どうしよう、これ。
…気持ち、いい。
「ん…っ、ぁ」
ベッドに座っていた体勢から、重心を移すように覆い被さられる。
後ろに倒れた体は支えられて、トサリと呆気なくシーツの上に寝かされた。
唾液で濡れた唇が、顎のラインを伝って首筋に埋まる。
啄むようなキスを散らされて、体は小刻みに反応した。
くすぐったい。
──プツ、
胸元に触れた手が、服のボタンを外していく。
その動作一つにも反応してしまう自分がいて、同時に思い出した。
そういえば…アレンの退魔の剣でできた、胸元の火傷のような傷跡。
あれ…見えない、かな…これだけ暗い部屋なら、見えてもはっきりはわからないだろうし…。
…そうだと、いいんだけど…。
「ぁっ」
一つ一つボタンを外していく手に、そんな焦りを感じていると、首筋に触れていた唇が強く吸い付いてきて意識が目の前に引き戻された。
尚も神田の動きは止まることなく、唇は首から鎖骨へと下りていく。
ボタンを外されて、外気に触れた肌を辿るように。
首から鎖骨、鎖骨から胸元。
「っ…神、田」
果たして傷跡に気付いているのか。
黙ったままの神田からは何もわからなくて、恥ずかしさも相俟って思わず肩を掴んだ。