My important place【D.Gray-man】
第34章 Resonance
「……やめて」
私は私。
私以外の何者でもないのに。
なんで知らない名に懐かしさを感じるの。
なんで双子のことを思うと哀しくなるの。
なんで。
「やめて…」
まるで今までの私に、新たな自分を上書きされるような感覚に。
泣きそうになった。
そんな感情要らない。
そんな感情持たせないで。
そんなもの持ってしまったら──
「…か、んだ」
咄嗟に口をついて出たのは、その人の名前だった。
姿見から離れて、ベッドの淵に凭れて座り込む。
ずるずると床に座り込んだまま、握った数珠に意識を集中させた。
泣きたくなるような感情から意識を背けるように。
思い出す。
私が今、一番強い思いを向けられる人を。
他は何も要らないから。
あの人だけ、傍にいればいい。
「…神田…」
立てた膝に顔を埋めて、その名を呼ぶ。
傍に、いたい。
あの人の傍に、私はいたいから。
それだけでいいの。
他に我儘なんて言わないから。
それだけ、叶えさせていて。