My important place【D.Gray-man】
第34章 Resonance
「……」
足首を押さえたまま顔を上げる。
目の前には姿見に映る、自分の姿。
何度鏡の中の自分を見返しても、その肌も目の色も聖痕もしっかりと存在している。
疑いようのない、それはまさしくあの双子と同じ姿だった。
──"逃げないと"
「…っ」
くらりと、一瞬頭が揺れる。
なんだろう、危機感のようなものを感じる。
逃げないと、此処から。
そう誰かに諭された。
──"帰らないと"
「……帰る?」
そういえば、双子も同じことを言っていた。
夢のようで夢じゃなかったあの出来事の中で、手を繋いで帰ろうと笑っていた。
帰るって、何処に?
わからない。
わからないけど──
『帰っておいで』
誰かに、言われた。
優しい声で。
両腕を広げて、迎えてくれた。
「…誰…」
あれは誰。
わからない。
わからない、けど。
「違、う…」
違う。
私がいるべき場所は。
…いたい場所は、此処だから。
「っ……」
手首の数珠を握りしめる。
私がいたいのは、あの人の隣だから。
迷いなくそう思えるから。
「出てって…っ」
私の頭の中を掻き乱すのはやめて。
「っ…私は、私」
言い聞かせる。
そうだ、私は私。
ノア化したって、自分の軸がブレなければ教団で生きていける。
そう自分で結論付けたじゃない。
例えノアになったって、ただの人のフリをして生きていけばいい。
そう自分で結論付けた。
落ち着け、私。
落ち着け。
「っは…」
固い数珠の感触を掌で感じながら、深く息を吸う。
何度も何度も。
ドクドクと鳴っていた心臓の音が静まってきて、深呼吸を繰り返すうちに音はやがて小さくなった。
──ィイイン…
耳鳴りが微かに頭の奥でする。
駄目だ、意識を逸らすな。
私は私。
月城 雪。
それ以外の何者でもない。
『この女の子…ラースラに似てない?』
「っ…」
なのに、なんで。
「なん、で」
その名が懐かしく感じるの