My important place【D.Gray-man】
第35章 抱擁
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「で? 何がどうしたらこうなんだよ。言い訳があるなら聞いてやる」
「い、いふぁいいふぁい!」
そんな頬抓ったら喋れませんて!
目の前で私の頬を抓りながら、アルバムを突き付けてくる鬼に言い訳する余地などなく。
引き摺られて放り込まれた神田の自室で逃げ場なんかなく、早々降参することにした。
「だから、リナリーの言う通りだって…ッか…神田の話してたら、そういう恰好しようって流れになったの…ッ」
なんとか解放されて、抓られた頬を擦りながら真実を話す。
恥ずかしいんですけど。
着飾った理由は貴方です、なんて言うの。
「偶には女らしい恰好したら、神田も私を女として見てくれるかなって…」
「は?」
「いや、だから…性別、間違われないで済むかなって」
時々、真面目な顔で性別無視してたでしょ。
男女で態度を変えないところは、神田らしいと思うけど。
でも性別無視って。
私は雌雄同体じゃないからね。
「何阿呆なこと言ってんだよ」
あ、阿呆言われた。
「…阿呆じゃないです本当のこと言っただけです」
でもこればっかりは真実だから、妥協する気はない。
半ば巻き込まれる形になっちゃったけど…リナリーが私を飾り立ててくれたのは、根本にその理由があるから。
…やっぱり神田にはちゃんと、その…女性として、見ていてほしいし…。
思わずむすっとなって視線を下げれば。
「んな恰好しなくても、充分見てるだろ」
神田の手が、私の後ろのドアにつく。
顔の横についた手に、その距離感の近さを改めて知る。
おお…これが俗にいう壁ドン……って違う。
「か、神田?」
「小綺麗にしてたって、今の酷ぇ顔だって俺には大差ねぇよ。月城は月城だ」
そ、それは褒めてもらってるのかな…よくわかんないけど。
……とりあえず近い。